研究系及び研究施設の現状 191
高 嶋 圭 史 (助手)
A -1)専門領域:加速器物理学
A -2)研究課題:
a) 電子蓄積リングに代わる小型光源の研究 b)小型放射光施設の放射線遮蔽の研究 c) X線発生用小型電子蓄積リングの研究
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) 電子蓄積リングに代わる小型光源のための電子発生装置として,フォトカソードを用いた高周波電子銃の研究,開 発を行っている。フォトカソード材料として,モリブデン基板およびガリウムヒ素基板上にセシウムテルライドを 蒸着し,量子効率の波長依存性を測定した。さらに,電子蓄積リングを用いない小型のX線源の実現可能性を検討す るため,エネルギー100 MeV程度の電子ビームを金属多層泊に入射した場合に発生するX線の強度をモンテカルロ シミュレーションにより計算した。
b)UV SOR 電子蓄積リングにおいて,電子ビーム損失によって発生する放射線量の方位角分布を測定し,電子損失の原 因となる電子ビームの残留ガスとの衝突及び,電子ビーム同士の衝突の断面積から導いた理論的な放射線量の予測 と比較した。
c) 電子エネルギー 1 GeV ,周長 40 m程度の小型電子蓄積リングに,X線発生用挿入光源として 7 T 超伝導電磁石を複 数個用いた場合の電子ビームの安定性に対する影響を検討した。また,偏向部からX線を発生させる方法として,偏 向電磁石を超伝導電磁石で作成し,強い偏向磁場を発生した場合の電子ビームの性質を検討した。
C ) 研究活動の課題と展望
放射光源を小型化する方法として,次の2つの方法を研究している。①高周波フォトカソードからの高密度,低エミッタンスの 電子ビームを取り出し加速した後,レーザーあるいは物質との相互作用で光を発生する方法,②小型の蓄積リングへ,ウィ グラー,アンジュレーター等の挿入光源を挿入し,必要な波長の放射光を十分な強度発生する方法。このうち,①においては, 電子密度を上げるため量子効率の良いカソード材料を選択する必要があり,セシウムテルライドは有望な候補であるが,そ の高周波フォトカソードとしての性質はまだ十分に調べられていない。現在,高周波を発生するためのクライストロン及びそ の電源の整備を行っており,カソードに高周波を印加して量子効率,カソードの寿命等の測定を行う予定である。セシウムテ ルライドを作成する基板として,モリブデン,ガリウムヒ素,チタン等を用いて量子効率の比較を行い,最良なカソードを作成 するための研究を続ける。また,100 MeV 程度の電子ビームを金属多層泊に入射した場合に発生するX線の実用性を理論 的及び実験的に検討する。②においては,電子エネルギー1 GeV 程度の蓄積リングに磁場強度 7 T の超伝導ウィグラーを 挿入した場合のビームの安定性を,ビームの入射から加速の過程にわたって調べている。また,小型放射光施設で発生す る放射線の空間分布を,電子ビーム損失の原因となっている様々な反応の断面積から正確に予測するための簡単な計算 方法を確立する。